彼のおかげで早く冊子を拾い終えることができた。 「あの、ありがとう」 「ちっ」 …。 (はぁ?なにあの態度!お礼行っただけなのに!) 彼の態度に苛立ちを隠せないまま、彼がこの場を立ち去るのを見送る私は、その背中をしばらく見つめていた。 シトラスの香りが、遠のいていく。 それは、掴めそうで掴めない。蜃気楼(シンキロウ)のような。儚く、消えてしまう。 幻。