「……ほなみ?」


どうして今まで気付かなかったのか不思議なくらいだ。
それもそのはず、米澤さんはこれまで長い前髪で目元を隠していたし、僕が彼女をこんな近距離でまじまじと見たのはこれが始めてなのだから。


「ほなみって……?」


米澤さんが控えめに首を傾げくる。
その上目遣いでキョトンとする仕草から、注意深く聞いてみたら声のトーンまで、観察すればするほど自分の目を疑いたくなるくらいに、長かった前髪を切り払った米澤さんの素顔はほなみに酷似していた。

意識し始めた途端、米澤さんが米澤さんではない人物にしか映らなくなる。
何度瞬きを繰り返しても、そこにいるのはほなみだ。
ここにいるはずのない彼女だ。