「よしできた!冬香、鏡見てみなさいよ」
「やっべ、オレ米澤ちゃんに惚れそう」
「やめろよシゲ。迷惑だから」
「冬香ちゃんお人形さんみたいで可愛いよ~」


ああ、米澤さん絡みですか。
その名を聞いて状況を察することができた。
芳賀さんは米澤さんと仲良くすべく、最近やけに力を入れていたみたいですからね。
その尽力が報われた結果といったところですか。
クラス委員長としてもとても喜ばしいことです。


「にしても夏枝髪いじるの上手だね~」
「これでも美容師目指してるのよ!」


意気揚々とブイサインを作る芳賀さん。
芳賀さんの将来の夢が美容師とは初耳ですね。
努力家な芳賀さんならきっと叶うでしょう。


「本当にお上手ですね」
「あっ、秋人くん!見てみて、冬香の前髪すっきりさせてみたのよ」


ご機嫌に芳賀さんは言って、恥ずかしそうに俯く米澤さんの顔をこちらに向かせた。

次の瞬間、僕は思考回路が停止しかけるほど呆気にとられた。
……だって、こんなことがあっていいのだろうか?