「夏枝ちゃんに喜んでもらいたいから、おばさん料理にはこだわってるのよ」


じゃれ合いがいつの間にやらプロレスもどきになっている二人を見つめて、おばさんは静かに言った。

その柔らかい笑顔からも、ナツとおじさんがいかに愛されているかが感じ取れる。


「大切にされてるんですね、ナツは」

「そりゃあ自分の子供だもの」

「自分の子供……」


ならどうしてアイツは俺のことを大切にしてくれないんだ?

俺を自分の子供だと思ってないからか?

それともこれで十分大切にしているつもりなのか?

どちらにしたってこの現状が変わることはないのだが。


「俺の母さんもおばさんみたいなら良かったのに」

「あら。褒めても何もでないわよ」

「いやもうご馳走出てますから」


アイツが何を考えているのか俺にはさっぱり分からない。

けど気に入らないところがあるのなら直すし、駄目なことがあればちゃんと聞く。

俺アンタの遺伝子しっかり受け継いであんまり頭よくないんだからさ、ちゃんと口で言ってくれなきゃ分からねーんだよ。


「ハルも混ざりましょーよ!」

「ぅえ!?ちょ、引っ張んなって!」


なあ……、俺はアンタを「母さん」と呼び続けてもいいんだよな?