*冬香side


愛情と友情。

天秤にかけて傾いた方を得てしまったら、きっと反対の器に乗せていたものは失われてしまう。

どちらも手に入れられるなんて、都合のいい話あるはずがない。

だから私はこんなにも悩んでいる。


「だからさァ、そこの振り付け違うって言ってんじゃん。米澤さんやる気あるわけ?」

「ご、ごめんね……」


修学旅行から帰ってくるなり、校内の雰囲気はガラリと変わった。

それもそのはず数週間後には学校祭を控えているわけで。

みんなあれやこれやと試行錯誤を繰り返しては、賞をもらうべく懸命に作業に取り組んでいる。


「ほらまた違うし!ボケっとしてないでよね」

「は、はいっ……!」


私はというとクラス発表の練習真っ只中。

だけどさっきから柳田さん(発表班のリーダーでキツい性格なんだよね)に指摘されてばかり。

だって私こういうの苦手なのに、役割分担をクジ引きなんかで決めるから……。

踊りの練習は大変だし、夏枝ちゃんや加奈ちゃんは教室展示班だからここにはいない。

こういうのは私なんかより、夏枝ちゃんみたいに活発な子の方が絶対向いてると思うのにな。