seasons.(シーズンズ)【完】




帰りのホームルームが終わり、掃除当番で振り分けられた音楽室の掃除をしている間も、俺の頭の中はナツのことでいっぱいだった。

これが恋煩いなら、まだ可愛いもんだったさ。

向こうで作曲家の肖像画を見ながら、「すごい癖毛よねー」なんて笑っているアイツは、オレがこんなこと考えているなんて知るわけがない。

掃除当番を終えるなりさっさと家に帰って寝ようと計画していたが、珍しいことに米澤から俺に話を掛けてきたので思わず足を止めてしまった。


「……長谷川くん、調子悪いのかな?」


何のつもりか、米澤は俺をひと気の少ない通りの廊下まで誘導するなり、控え目に訊ねてきた。

これには拍子抜けだ。

前回の木村の件もあるから告白だなんて変な期待は持ってなかったけど、それにしたっていきなり何だって言うんだ。

保険医気取りか?


「悪くはねーけど」

「……けど?」


疑わしい視線を向けてくる米澤に若干苛立ちを感じた。


「なんだってんだよ!」


普段使わない脳ミソを朝から活性化させてたせいか俺も疲れていたんだろうな。

つい怒鳴っちまった。

米澤は一瞬怯んだが、すぐに強気な顔を取り戻して、


「いつもと様子がおかしいから、何かあったのかなってみんな心配してるんだよ!?」


きっと本人も勇気を振り絞ってるであろう、その口から聞いたこともないような音量の声を上げた。

……ん?“みんな”だって?