席替えがあった。
岡本君が隣になった。
彼はクラスで一番おもしろくて、楽しくて、笑顔が多くて、
すっごく素敵な人。
次第に話す回数も多くなり、今では毎日話すことができる。
彼と話している間は、もう一人の彼のことは忘れられて。
そんな風に、高校2年生を過ごせたせいか、
もうあの人のことは……
元カレのことは、
今ではすっかり頭から消えた過去の人になれた。
春がまた来て、私たちは高校3年生になった。
結局彼とはクラスが離れてしまって、
かなわぬ恋だったけど、でも、本当に彼には感謝してる。
本当に。
私が卒業式の日、彼にそのことを伝えたとき、
彼はちょっとびっくりしながらも、
「よかった。」
そう言って、またあの笑顔で微笑んでくれた。
彼は、私にとってのヒーロー。
内緒だけどね!
森崎君のことを言えば、
2年生の秋の時、私は森崎君に告白された。
「好きだったんだ。
彼のことがまだ完全に忘れられてないと思うけど、
俺が忘れさせるから、付き合ってください。」
彼はお得意の真っ赤なトマトで、そう言ってくれた。
「私、もう元カレのことは、好きじゃないよ。」
「え?」
「でもごめん。。
私、岡本君のことが好きで、、叶わないってわかってるんだけど、
やっぱり彼に惹かれちゃうんだ。。
でも、元カレのことを忘れられたのは、森崎君のおかげでもあるから。
フラれたばかりの時、話しかけてくれてありがとう。
本当にありがたかったんだ。」
「うん、そっか。
うん。
フラれたのは残念だけど、
この一年俺が柏木さんの力になれてたんだったら、それでいいや!
ありがとう、そのこと教えてくれて。
これからも応援してるから。
一緒に頑張ろうね。」
森崎君は、赤いトマトをキラキラ実らせながら、私にそういった。
私は差し出された手を、しっかり握った。
しっかり。
元彼から連絡を取るのは、年に数回程度。
それも日常的会話。
前は、なんでこんなことしてんだろ、って思ってたけど、
もうそれもどうでもいいくらいに思えて。
彼はどう思ってるのかやっぱりわからないけど。
でも私は今思う。
彼と付き合えて、別れてよかったと。
「ちかこ、ほら写真みんなで撮るよ!」
「はーい!」
私が今、とびっきりの笑顔で笑うことができるのは、
森崎君、岡本君、ちかこ、家族、先生、クラスのみんな、
そして、元彼。
みんなに感謝しながら、
私はここ桜ヶ丘高校を卒業するんだ。
桜が舞う中を。