元々オカルトやホラーが不得意な私だけど、一応小学生の時に片想いをしていた経験があるから、そのジンクスに縋ってみたいという気持ちはわからないこともない。

とはいえ今は特に好きな人がいないので、私がそれを実行する予定は未定。

現在春爛漫、ボリュームのある桜を咲き誇らせた木は校舎裏で今日も勇気ある者を待ち構えているわけだが。


「麻倉ー、ご指名だぞ」


昼休みに入って間もなく、お弁当を鞄から取り出した私に声をかけてきたのはクラスメイトである男子。

どうやら私に用事のある人が訪れたらしく、彼の視線の先には一人の男子生徒が立っていた。

随分といかつい顔をしている男子だけど、私何か目をつけられるような悪さしたっけ?

クエスチョンマークを浮かべる私に、男子が苦笑混じりに小声で言った。


「そいやアイツ前麻倉のこと一目惚れしてからずっと気になってるとか言ってたんだよなぁ」

「は」

「もしかして桜の木の下連れて行かれるんじゃないか」

「マ、マジですか」