桜夜くんが私の前から忽然と姿を消してまだ日は浅い。

心にポッカリ穴が開いたような虚無感に見舞われた私は、精神的に不安定な部分が残る中でもあの絵を完成させた。

桜夜くんと過ごした日々を脳裏に思い描きながら筆をとり、黒く塗ってしまった箇所には思いを上書きするように再び桃色を重ねた。

そしてその絵は審査で優秀賞をいただいてしまい、絵画展の一番目立つ位置に飾られることとなってしまったのだから、これは皮肉とも言うべきだろうか。

本来ならば泣いて歓喜するような名誉なのに、どうしても心底から喜べなかった。

あんな暗い心境で描いた絵が世間から評価されるなんて複雑だ。

両親や友人が祝福してくれる傍ら、私の心の闇は濃くなるばかり。