「明日の大会さ、もし優勝したら……」

「もし、って何よ」

「…………」

「絶対優勝できるでしょ?桜夜くんだもん」

「……そう、だよな」

「応援行くから頑張ってよね」


ぼんやりと明かりを受けている桜夜くんは珍しく弱気な表情をしていたけど、私が笑い掛けたら薄っすらと微笑み返してくれた。

桜夜くんでも自信無くすことあるんだね。

こんな稀なことが起きたのは、もしかしたら何か良からぬことが訪れる前兆かもしれない。

明日は春であるにも関わらず雪でも積もるかな。などと冗談を考えていたのだが、あろうことか実際にマイナスなことが起きてしまったから、笑い事では済まされなくなってしまったのだ。

桜夜くんは大会の地区予選一戦目から最下位という結果で終わってしまった。

あの桜夜くんが最下位なんて信じられなかった。何が起こったのか意味が分からなかった。

スタートから遅れをとっていて、それでも桜夜くんなら追い上げて一位になれるって、彼の実力を過信していたから。

走り終えた桜夜くんの絶望色に染まった表情が何を意味するのか。

そしてもしこの試合に勝てていれば、桜夜くんが私に何を伝えようとしていたのか。

どれも知らずに終わればあんなことには――……。