桜夜くんは笑う。いつかあのクソ親父に仕返しをしてやるんだ、と。

最悪桜夜くんは失明していたかもしれないのだから、そう考えるといくら実の父親であれ心底から恨みたくなるのも仕方のないことだろう。

自己中心的な言動で人のことを振り回すどうしようもない俺様だけど、その裏側に隠された本質を知ってしまった私は、心臓を鷲掴みされたかのように心苦しくなった。


「――なーんてな」

「……は?」

「嘘だよ嘘。今のただの作り話だし」

「なっ、なにそれ!?」

「ははっ、今めちゃくちゃ本気にしてただろォ?泣きそうな顔してたぜ?」

「ちょっと、なんなのもう、サイッテー!心配して損した」


なんて頬を膨らませてみた私だけど、実は気付いてたんだ。

今の話をしている時の桜夜くんの声が、小刻みに震えていたってこと。


「強がらなくてもいいのに……」


そう呟いてみたら夜桜くんに「なんか言ったかー?」と訊ねられて、すぐさま私は「なんでもないよ」とそっぽを向いた。

桜の花びらがひらりと横髪を掠める。