ドロップ・ダスト【完】

「……あのさ、そんなに疲れるんだったらやめれば?」
「あ?」
「演技するの、やめちゃいなよ」
「はァ?お前何様のつもりだ。せっかくこっちが夢見てるスイーツ女子共のためにキャラ作ってやってるってのに」
「よく言うよ。誰かからお願いされたわけでもないのに。ただちやほやされて都合が良いからその便利なキャラを取り繕ってるのは自分自身でしょ?それがダルい?疲れる?ならそんなのやめちゃえばいい!」


出だしは小声だったのに次第に感情的になってしまった私は、少し声を荒げ過ぎたのではないかと不安になった。
奴の気に障っていたらどうしよう。

恐る恐る雛沢の方を見やれば、端整な顔は少しだけ驚きの色を浮かべていて、僅かに見開かれた瞳が揺れていた。
何度か長い睫毛を上下させた雛沢はハッとしてから私を睨みつけると、余裕で耳に届くほど大きな舌打ちをしたあと、不機嫌なオーラを漂わせたまま倉庫を出て行ってしまった。

船木の言った通りだった。他人の意見なんて微塵も聞くつもりはないらしい。
でも一応伝えるだけ伝えられたから、私の気持ちはいくらかスッキリした。所詮は安っぽい自己満足に過ぎないけれど。
そんな中途半端な形で終了したかと思われた私の行動は、この後とんでもないシチュエーションのもと報われる形となる。