ふと見上げた夜空には



遠くの三日月が雲間から
ちょこんと顔を出していた。



時刻は午後8時。



どこもかしこも
人、人、人…



その波をかき分けて
ようやく繁華街を抜けると



虹色の文字で描かれた
カラフルな看板が目に留まった。



『いらっしゃいませ!』



『お待ちしておりました。』



早速店に入ると、



2人の女性店員が
笑顔で俺を迎えてくれた。



『では、お席をご案内しますね。』



『はい。』



俺は店員の背中を追うように
まっすぐに奥へ進んで行った。



すると、



窓際の席で肩肘をつきながら



ぼんやりと外を眺めている
夏希の姿を見つけた。