そんなことより、そろそろだよね?


新撰組の事件のなかで一番といっていいほど有名なもの。


『池田屋事件』


たしか、6月5日らしいけど。


今って、何日?


私がここに来たのは、5月2日。


もうしばらくたってるし、そろそろこの事件がおきてもいい頃のはず。


「沖田さん。そういえば、朝から聞こえる悲鳴は何なんですか?」


「あぁ、あの悲鳴は……」


私が問うと、沖田さんは言葉につまった。


早朝から聞こえてきた悲鳴。


ずっと不思議だったんだけど、私の予想では。


────桝屋の、古高が捕まった?


叫び声は、きっと拷問の末。


「舞花さんも来ますか?一応、隊士ですもんね。」


「は、はい。行きます。」


私は、古高が拷問されているであろう蔵へと足を運んだ。


蔵につくと、そこは生臭い香りで広がっていた。


─────血の、香り。


私はまだ、人を斬ったことがない。


巡察もまだ参加していない。


実質、稽古のみ。


非常勤隊士、のようなもので。


血に慣れておらず、気分を悪くするなんて、この場にいてはいけないはず。


私は神経をフル回転させ、なんとか意識を保った。