家に帰ると、誰もいなかった。
いや、正確には、ある人がいなかった。
リビングの机には印鑑と紙。
そして、机に屈服して泣いている父。
当時まだ子どもだった私でも、すぐに分かった。
────お母さんはもう、帰ってこない─
後から聞いた話だと、母は別の男と駆け落ちしたらしい。
父を捨て、母が別のところに行った理由。
………私のせい。
実は私は父の子じゃなかったんだって。
母が逃げた男との間に生まれた子らしい。
それから父は…変わった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…