そしてその気配は儚月から見えた。
疑いたくはないが、どうしても疑ってしまう。
そして、その日の夜……
────浅葱のうなされる声で、花翼は布団から体を起こした。
「浅葱殿、浅葱殿、」
肩を揺するが、依然として反応はない。
「か……よ、く……」
「浅葱殿!」
自分の名が呼ばれただけでも、少し安心した。
意識があるとないとでは、浅葱の身の状況は大きく違う。
「浅葱殿、……っ、失礼致します、!」
花翼は意を決して、浅葱の着物に手をかけた。
そして、露になった浅葱の肌に現れている"黒く長い爪"と"化け物"のような黒い跡に、花翼は息を飲んだ。