「何か変わったことはあったか?」


「いいえ。とくになにも。」


「そうか。それならいい。」


「食事のほうはどういたしますか?」


「今日は遠慮しておく。お前も休め。ここが黒くなっているぞ。あまり睡眠をとっていないのだろう?」


浅葱は花翼のまぶたをトントン、と叩いた。


そう、花翼はここ数日眠れていなかったのだ。


その理由はわからないが、花翼自身、何かがおこる前兆ではないか、と疑っていた。


そして、その頃から花翼は時折ある夢を見るようになっていた。


その夢は、決して気持ちのよいものではなかった。


とても、見るに耐えない惨劇の様子や、儚月が花翼を踏みつけている様子、そして。


…………浅葱が苦しみもがく様子。


ただの夢だということは、花翼自身もわかっている。


たが、その夢があまりにも現実味を帯びていたため、花翼は少し心配してしまったのだ。


浅葱の身の、安全を。