浅葱が屋敷を出てから、早数日がたった頃のこと。
花翼は部屋で1人布を織っていた。
都に来てから磨閖に習った機織り。
初めは下手にもほどがあったが、今では高値がつくほどの出来栄えであった。
今織っている布は浅葱に送ろうと、数日前から織り始めたもの。
このまま順調に進めば、あと2日ほどで完成するだろう。
喜んでもらえるだろうか……………花翼の胸にわずかな不安が募る。
「浅葱殿なら……………」
浅葱なら、きっと喜んでくれるはずだ。
いつも舞花からの贈り物は喜んで受け取ってくれる。
今までたくさんの布を浅葱に贈った。
だが、今回織っている布は今までとは違って、あるまじないをかけてある。
舞花の持つ治癒能力を少しだけ分け与えた自身の髪を1本織り込んであるのだ。
この衣を纏えば、少しだけ治癒の力を分け与えることができる。
怪我をしても、少しなら治してあげることができる。
花翼は早く浅葱に渡したくてしかたがなかった。
浅葱が帰ってくるのはひと月後のこと。