「体調が悪いわけではないらしい。だが何かを隠している気がするんだ。」
「そうですか……………」
「それと、俺はこの屋敷を離れてある場所の調査をしに行く。だからしばらくは夜の相手はできないが……………いいか?」
「よ、夜は大丈夫です!!」
花翼は色恋には疎い。それもかなり。
浅葱と初めて夜を過ごした日も、まったくなにをするのかがわからず、浅葱を呆れさせたほどだ。
それ以来、花翼は夜になって、浅葱が部屋にくると、毎回顔を真っ赤に染めるのだ。
浅葱はそんな花翼が可愛くて、つい苛めてしまうのだが。
「それと…………磨閖にも気をつけろ。最近のあいつはおかしい。何か黒いものにとりつかれている気がする。注意して行動しろ。」
「はい。わかりました。」
確かに最近の磨閖はどこかおかしい。
集点の定まっていないような目で四六時中屋敷を歩きまわっている。
なにかあったのか、とも思ったが、なかなか話しかけられる空気ではなかった。
屋敷の術者に調べさせているが、収穫は何一つとしてない。
何故磨閖があのようなったのか、原因すらも不明。