入ってきたのは大人ばかり。
花翼は無意識に背筋を伸ばした。
「よ、よろしくお願い致します………」
花翼が初めて能力を使った瞬間だった。
花翼の演奏が終わると、奇妙なことがおきたという。
怪我をしていた者は怪我がなくなり、調子が悪かった者は、嘘のように元気になっていた。
それから村の者達は花翼のもとへ集まり始め、琴を弾くことが、花翼の仕事のようになっていった。
そんな、ある日のことだった。
──────都から、ある一人の男がやってきたのは。
「ここに腕の良い琴の演奏者が居ると聞いた。どこにいる?」
村の者は花翼の居場所を教えた。
都から来た男は、花翼のもとへと向かった。
花翼はまたいつものように琴を弾いていた。
今日は珍しく仕事がなく、一日自由な時間を過ごしていた。