うつくしいもの


「あの時、バランス崩して落ちるって分かった時、

もうこのままどうなってもいいや、って思ったんだよ。

手を伸ばせば、手すりに掴まる事が出来たのに……」


そう言われて、
返す言葉が出て来なくなってしまう



彼を絶望から救える言葉なんて、ないから




「それにしても、俺の最後のライブは、お前だけか?

そりゃあ事前に告知とかして無かったけど」


涼雅は笑い、目を細める



その目には、あのライブハウスを人で一杯に埋めて、

ステージから見えるあの風景が見えているようだった




私にも、あの風景が見えてしまう