うつくしいもの


「俺、歌声が寺岡さんに似てるってよく言われるけど、
声だけじゃなくて、
そんな所も似ている。

優等生なんだけど、
天才じゃないって感じ」


今度は、秋原さんの言葉に何も言えなかった




私が涼雅の歌声に覚えたような感動を、

秋原さんの歌声には感じなかった




「曲を作る才能に恵まれているのも、寺岡さんと同じかな。

時代が合ったのか、
寺岡さんのバンドよりも俺らの方が断然売れてるけど……」


秋原さんは淡々とそう話すと、
グラスに再びワインを注ぐ



何か言わないと、って思うのに、言葉が出ない




「菜々花ちゃんには、
俺や寺岡さんにはない才能が有るんだよ。

だから、君とは一緒に歌いたくないな」



「でも……」



このままコラボを断られたら、

私がここに来た意味がない



断る理由は、

それほど私にとって悪いものじゃなかったけど


でも