最悪から最愛へ

渚は、メールが欲しい、休みを教えて欲しいと言われたことを説明する。


「あの客、しつこそうですよ。チーフ、やっぱ危ないですよね。帰りとかに待ち伏せでもされたら、まじでヤバいっすよ」


「お前と二人でここにいるのもヤバいけどな」


峻は涼しい顔で田中くんに牽制する。


「俺は、ああいう客と違いますよ。ちゃんと割り切ることも出来ますから」


「割り切るって、今日だけとかそういう意味か?」


「あー、まあ…そうですね。ただ、ちょっとチーフに興味を持っただけですから。ここまでの年上を相手にしたことないんで、どんな感じかなと思って」


悪いことはしてないという認識らしい。興味を持ったから、この場限りでいいという考えは、渚にも峻にも理解出来ないことだった。


「お前、そんなふうに考えているから、平気で嘘つけるんだな…」


渚も峻と同じことを思っていた。