最悪から最愛へ

渚は、突拍子もない発言に唖然とする。


「はい?」


聞き間違えたのかと、聞き返す。いきなり「エッチ」を出すなんて思いもしない。まして、自分よりもかなり年下の男からだから、信じられなくなるのも当然である。


「いや、あの、私、田中くんよりもかなり年上だよ?」


「俺もですね、30過ぎの人はおばさんだと思っていたんですよ。でも、今日のチーフはなんかかわいかったので、ちょっと興味を持ちました。どうですか?」


何気なく上司である渚に失礼なことを言う田中くんであるが、渚の心は動揺する。でも、田中くんには彼女がいたことを思い出す。


「田中くんは、彼女がいるんでしょう?」


峻のファンである客から得た情報だ。


「彼女はもちろん大事です。ただ、チーフが気になったので、試してみようかなと…」


軽い。田中くんの軽い考えは、渚には理解不可能だった。