最悪から最愛へ

「ご一緒してもいいですか?一緒に行ってください。1人で行くのは心細かったんですよー」


冷たくされないのをいいことに、由香は峻の腕に手を回して、上目遣いでまた甘えた声を出す。


「ごめんね。一件電話してから行かないとならないから、先に行っててくれる?もしかしたら、少し遅れるかもしれないから、部長に話しておいてもらえるとすごく助かるんだけど」


すらすらと簡単に嘘をついて、やんわりと回された手をほどいた。


「はい!了解しましたー。任せてくださいね」


満面な笑顔を見せた由香は、軽い足取りで中に入っていく。頼りにされることが嬉しいのだ。


峻は、車に戻って…まずは一服。たばこに火を点けて、煙を出す。嫌いなタイプが女は、少し話すだけでイライラしてストレスが溜まる。


「一応電話しておくか…」


基本真面目な峻は嘘を本当にしてしまうのだった。