最悪から最愛へ

「いらっしゃいませ」


渚の隣に応援に入った峻が立ち、客に挨拶をする。チーフと店長が同じレジに入ることは稀である。


「店長。私は大丈夫なので、他のレジに…」


「他はもうみんな入っている。我慢しろ…」


峻だって、渚のところに入るつもりはなかった。だが、卵のパックを落としてしまった客がいて、その対応と片付けをちょうどしていて、出遅れた。

それで、唯一空いていた渚のレジに入った次第だ。渚が商品をスキャンして、キャッシャーを峻が行った。


「ありがとうございました。またお越しくださいませ」


さすが店長とレジチーフのコンビである。どのレジよりも早く丁寧である。

この場だけと割り切って、お互い笑顔でやり取りをする。それが出来るのは、スーパー業界のプロ精神があるからだろう。

峻は今まで向けられたことのない笑顔を自分に向けられて、少し動揺する。