最悪から最愛へ

現場で経験を積むのも修行の1つで大事なことだと無理やり思い込んで、与えられたレジ業務や、仕入れ業務を行ってきて、その成果が認められて店長にまで昇進した。

いつか本部へという期待を胸に膨らませてはいたけど…気付けば、13年の年月が流れていた。


配属先が変わってまだ半年。そうすぐに本部に移れるとは思わないが、異例の辞令が出ないかと密かに願っている。


「フッ…バカだな、あいつ」


さっきまで言い合いをしていた渚の顔をふと思い出し、バカと笑う。お互いの相性が合わないのは、それぞれ理解している。意見が分かれて、バトルになるのは珍しいことではない。

渚はそのバトルが苦痛でストレスを感じるというのに、峻はそのバトルをストレス発散にしていた。だから、つい鼻歌が出てしまう。犬のように噛み付いてくる渚を軽くあしらうのが、楽しいのである。

軽くあしらうつもりが、つい熱いバトルになってしまうことも少なくないが。