最悪から最愛へ

渚から聞き出すことを諦めて、峻は自分の家の住所を告げた。10分後、峻の住む12階建のマンションに到着した。


「紺野、歩けるか?」


「んー」


薄目を開けた渚をタクシーから引っ張り出して、抱きかかえた。



「んー」


「起きたか?家に帰れるか?起きないなら、俺の家に連れて行くぞ」


「んー」


相変わらず「んー」しか返ってこない。目はほんの少しだけ開いているが、峻が抱きかかえないと、立ってることも出来ない状態だ。


「ほら、靴を脱げ…はあ、いい加減に起きろよ」


峻は渚のサンダルを脱がせて、ソファーに転がした。気持ちよさそうにすやすや眠っている。


「全く、何様のつもりだ?」


渚の鼻を摘んでみる。


「んー」


顔を動かすが、起きる気配はない。こんな状態では、何をされても文句は言えない。峻は、怪我している膝をそっと撫でてみた。


「んー、痛い…」