最悪から最愛へ

グラッ

寝たことによって、安定感のない渚の頭が右に左にと揺れ動く。

峻は、渚の揺れる頭を自分の肩に乗せた。これなら、揺れて落ちることはないし、安定する。肩に感じる重みは、仕方なく我慢する。


「お客さーん、もう少し進みますか?」


渚の住む町内へタクシーが入った。運転手はスピードを落として、指示を待つ。


「えーと…ちょっと待ってください。紺野、起きろ。家はどこだよ?説明して」


渚の頭を起こして、揺するが、返事が聞こえてこない。


「おい、起きろって」


「んー」


「お前んち、どこ?」


「んー」


聞こえてくる返事は「んー」だけ。目は開いていないから、今どこにいるのかきっと分かっていない。峻と反対方向に頭を傾けて、窓にぶつかる。起きる気配は感じられない。


「お客さーん、どうしますか?」


「あー、じゃあ、隣の南町まで行ってください」