最悪から最愛へ

「まだこれから。そんなに慌てなくても間に合うだろ?紺野は真面目だから、いつも早いよね」


渚が立ち上がると空いた椅子に小田が座る。


「店長気分で座っていたら?じゃあね」


小田は渚が出て、ドアが閉まったのを確認すると、靴を脱いだ足をテーブルに乗せた。

店長気分というより重役気分なのかもしれないけど、店長の峻は絶対にそんな行儀の悪い座り方はしない。



「ふっ♪ふん♪ふーん♪」

店を出た開放感なのか、鼻歌が出るほどご機嫌に峻はなっていた。


峻は2年前、店長に昇進して、半年前に今の店舗へ異動してきた。

峻は渚と違って、ここのスーパーを第一希望として、入社試験を受けた。大学時代に学んだ経営学から、スーパーのマーケティングに興味を持ったのが、志望の動機だ。

配属先はマーケティングに関わることが出来る本部が希望だったが、そこまで希望通りにはいかなかった。