ドン!


拳を振り上げて、デスクを叩く。渚の怒りはそう簡単に収まりそうにない。収まるどころか、今までに何度かあった衝突を思い出して、余計に苛立つ。


トントン…


「失礼しまーす。あれ?何で紺野?店長はいないの?」


「さっきエリア会議に出て行ったわよ」


不機嫌に答える渚に、入ってきた小田友也は苦笑する。


「どうしたんだよ?眉間に皺寄ってるぞ。またやり合った?」


「あの分からず屋…ホントむかつくんだもの」


小田は渚の同期で、青果部門のチーフをしている。


「まあまあ、店長がいないなら羽を伸ばそうぜ。ちょうど今、空いているしさ」


小田はモニターを軽く叩いてから、渚の頭を撫でる。

渚はその手をやんわりと振り払う。


「あいにくのんびりしてる暇はないの。来月のシフトを組まないといけないし。小田くんは、もう終わった?」