最悪から最愛へ

「帰る?」


「なんだよ、帰りたくないのかよ?」


名残惜しそうな顔をする渚の鼻を峻はつまんだ。


「痛い…です」


「渚さ、俺の心を振り回していない?」


一喜一憂させられている気分である。


「そんなことないです…ただ、私は…」


「なに?」


「なんか寂しいなと思って。あー、もう…」


渚は座り込んで頭を抱える。口に出してしまったことが恥ずかしくなったのだ。素直になりきれない。


「ハハッ。渚、かわいいな。ほら、立てよ。帰るぞ」


渚の手を持って、立ち上がらせる。照れる渚は新鮮だ。


「はい」


家に帰って、混乱している頭の中を整理しないとならない。峻と離れがたい気持ちもあるけど、ひとまず一人で考えたい。

本能のままで動くと流されてしまう。それも悪くはないのかもしれないけど、もう少し時間が欲しい。