最悪から最愛へ

「見たい映画があるんだ。一緒に行かないか?」


まるでデートの誘いのようだ。デートの誘いかもしれないが、渚が全く予想もしていない誘いだ。峻からデートに誘われるなんて有り得ないことだから。


「おい、返事は?」


何も反応がない渚に峻は一歩近づいた。


「うわっ!近いですよ」


思わず後退りするが、狭い店長室に逃げ場はない。渚は、ドアに背中をぴったりと付ける格好になった。近付く峻を真っ直ぐに見ることが出来なくて俯く。

峻は右の口角を上げて笑い、渚の顎に手を触れる。


「やっぱり避けてる?」


「避けているんじゃないですけど」


「けど?」


「こんな近くに来られたら、逃げたくなります」


渚は本当に逃げ出したい気分だった。だけど、峻はまだ渚を解放するつもりはない。


トントン


「店長。いいですか?」


「ん、ああ…どうぞ」