最悪から最愛へ

「いいから、降りろよ」


助手席のドアが峻の手によって、開かれ、渚は降ろされる。
まだ足取りはおぼつかなくて、よろける。


「大丈夫か?


珍しく優しい言葉をかける峻は、渚の右手を握る。


「何とか…」


渚は、握られた手を握り返す。何となく安心出来る手だった。


「店長…」


「ん?なんだ?」


「どうして迎えに来てくれたのですか?」


わざわざ夜中に出てきた理由が知りたい。


「迎えに来たわけではない。田中の邪魔をしに行ったんだ」


「あ!そういえば!」


「なんだ?」


「田中くんは?」


ここにいるはずのない田中くんの姿を探す。それよりも峻に聞いた理由は…もう興味ないのだろうか。


「さっさと帰ったよ。ほら、入れ」


「おじゃまします…」


連れられるまま、付いてきた峻の部屋に渚はゆっくりと足を踏み入れる。酔いは冷めてきていた。