「待てー!!」


「ちょっ、飯ん時ぐらいゆっくりさせろよ!」


弁当箱を持って逃げるアイツ。

棚などの上に乗ってアイツを追い掛ける私。

今日も追い掛けてます。



ども、矢野 椛、高校2年生です。

アクロバティック得意の私は、毎日アイツを追い掛けます。

アイツとは、私の大好きな人、武藤 一希のこと。

私はアイツを見つけたらすぐ追い掛ける。

だって、そうしないと…


そう思った時、


ーヒュッ


何かが飛んで来た。

その何かは私の横をギリギリで通って行った。

その何かは木に刺さり、動きを止めた。

弓矢?

近くで見てみると、それは弓道部が使う弓矢だった。

弓道部の友達は一人しかいない。

そうあの人しか………


「椛ちゃ~ん?何してるのかなぁ?もしかして、鬼ごっことかかなぁ?」


後ろから恐ろしいほど低い声が聞こえた。

錆びたんじゃないかってぐらいギチキチと首を動かし、後ろを見ると……


「ひぃっ!!」


恐ろしい顔を私に向ける、

私の親友、弓道部所属の矢口 都が黒い笑顔でニコニコ笑っていた。

閻魔大王降臨しました、はい。

閻魔大王&みっちゃんこと、矢口 都は、矢口→矢野で、出席番号が近いことから仲良くなった。

今ではわかり会える親友になったが…。


「椛、アンタいっそのこと死ね」


親友とは思えぬ発言をする毒舌さん。

もう慣れたけど、最初の頃はショック受けて寝込んだからね?

私、ガラスのハートですから。


「武藤追い掛け続けてるくらいなら死んだ方がマシでしょ」


いやいやいや。

その逆で、死ぬより武藤追い掛ける方がマシなんだけど…。