「なんだなんだー?とうとうあのペットとやらに逃げられたのか~?」


そんな風に私をからかってくるお兄ちゃんはお母さんに叱られて、お弁当を手にさっさと家を出ていった。
私はその様子を物憂げな眼差しで見ながら思いを巡らす。

そうだ、お兄ちゃんの言葉の通り、私は菊地原くんをペットのような感覚で扱っていた。
そのせいで菊地原くんを傷付けた。私は最低な人間だ。
菊地原くんの気も知らずに一人で浮かれて、今までも我慢してくれていただけで、たくさん不快な思いさせちゃってたのかもしれない。
お弁当も私が気付いていなかっただけで、本当は押しつけがましいと感じていたのかもしれない。

それでも菊地原くんは私のことを好きだと言ってくれたのは事実だ。
ただ、彼が私に向けている感情を、私はまだ理解できていない。