「福松の手作り弁当うめぇな。菊地原だっけ?アイツこんなうまいもん毎日タダで食わせてもらってるとか羨ましいぜ」


菊地原くんの好きだった玉子焼きを特に絶賛してくれたクラスメイトには苦笑いで返すしかなかった。

もう私が菊地原くんにお弁当を作ってあげることはないだろう。
だって、あれは嫌われた。確実に。今日休んでいるのだって、昨日のことが関係しているに違いない。
嫌いな人の作ったお弁当なんて反吐が出るだろう。

親睦を深めるのには多くの時間を費やさなければいけないけれど、築き上げたそれを壊すのはとても容易いことなのだと、身をもって思い知らされた。
私達の関係はたった数秒のやり取りが原因で、あっけなく終わりを告げたのだ。


「……あれ?お前弁当作ってあげるのやめたの?」


次の日も、そのまた次の日も菊地原くんは学校を休んだ。
奈良くんがわざわざ教室に来て教えてくれたのだ。

私はというと、今まで通りお母さんに代わり家族のお弁当を作り続けていたのだが、お弁当箱の数が一つ減ったことをお兄ちゃんに突っ込まれて、居た堪れない気持ちになる。