最近少しずつ肌寒くなってきて、私達はお互いカーディガンを着用するようになっていた。
黒色の私に対し菊地原くんはベージュ色で、その色がふわふわの髪と相まってますます猫を彷彿させる。

しかも到着したクレープ屋で彼が頼んだものがツナサラダクレープだったから、魚繋がりで猫のイメージがより一層高まった私は、グッジョブとこっそり親指を立てた。
ちなみに私が選んだのは無難にチョコバナナだ。
菊地原くんってば菓子パンを好んでいたから、てっきりくどいくらいに生クリームが入ったクレープを注文すると思っていたんだけどな。

美味しそうにクレープに食いつくご機嫌な菊地原くんのお尻には、左右に振られている尻尾が見えた、気がした。
というか今更だけどこの店のメニュー甘いクレープだけじゃないから、奈良くん自分で券使えたんじゃないかなぁ。


「そんでさぁ、奈良の断末魔にみんな爆笑して~……って福松聞いてるぅ?」
「え?あ、ごめんなさい」


菊地原くんに名前を呼ばれてハッとする。
うっかりしていた。
クレープを食べながら雑談をする菊地原くんを凝視していたせいで、話の内容を聞き流してしまっていたのだ。