お弁当を作ってあげるだなんて思いきったことを言ったものの、不自由のない家庭で育った私は特別料理が得意というわけではなかった。
普段のお弁当だってお父さんとお兄ちゃんの分と一緒にお母さんが作ってくれているから、それに甘えてしまえばそもそも自分でお弁当を作るという機会に恵まれないのだ。

ならばこれを機に少しずつ学んでいけばいい。
そう前向きに考えながら翌日の早朝、私は早速台所に立って慣れない調理に取り組んでいた。
ついでにお父さんとお兄ちゃんの分も作るから、全部で四つのお弁当箱を並べて意気込みを入れる。
昨夜携帯サイトで調べたバランスのとれたお弁当のレシピを参考にしていると、お母さんが驚いた様子で飼い猫を抱いたまま起きてきて、それから寝ぐせが酷いお父さん、朝からテンションの高いお兄ちゃんには「彼氏でもできたのかー?」なんてからかわれたりもした。


「うーん、彼氏じゃなくてペットみたいな感じかな」


それを伝えたら私のことを本気で心配しているような顔をされたけど、今は調理に専念したいから軽く流しておくことに。