姫 ~なくてはならないもの~








「宝生さつき。一応なっちゃんとは幼馴染です」









 私が喋るのをやめたせいでしんっとする生徒会室。



 だけど、そのせいだけじゃなくて、なんだか室内自体が冷たく重くなったように感じた。






 周りを見れば、なっちゃん以外の人は驚いた顔をしていて



 相沢さん一人だけがなるほどね、と呟く。










「あ、の、どうかしましたか?」


「ううん、なんでもないよ。それよりさつきちゃん、敬語じゃなくて大丈夫だよ」









 にこっと笑って相沢さんは言ってくれる。



 だけどその笑顔からは温かさが感じられなくて、さっきよりも寒く感じてしまう。



 柔らかい雰囲気を持つ、…ううん。持たせているからあまり感じないけれど


 それでもかすかに感じる違和感。



 目つきが良くない相沢さんにまっすぐ見つめられると睨まれているような気分になる。










「俺の顔に何かついてる?」

「ううん、なんでもない……」









 首を横に振って最後の自己紹介を待つ。