まだ、桜が残る頃。



あたしは色々あって今日からこの学校に通うことになった。




4月も終わりが近づき、暖かい日が増えてきた。


すごく眠い。



あたしはあくびをひとつして話を聞く。





「佐々木はA組に入ってもらうからなー」


そう気怠げに話すのは担任の西野先生。




西野先生は30代くらいの男の先生であたしと変わらないくらいの身長。


男の人にしては少し高いアルトの声。



ボサボサの頭にくまのアップリケがついたポロシャツ。そして白衣を着ている何とも不思議な人だった。




あたしは西野先生に連れられて校舎を歩く。




新しい校舎は綺麗でゴミ1つない。


それどころか大きなシャンデリアがあったり、美しいステンドグラスがあったりととても豪華な内装だった。


「この学校…とても綺麗。」



あたしがつぶやくと、



西野先生はちらりとこちらを見た。




「ああ、清掃員さんが掃除してくれるからな。」


そういって窓の外を指さす。



少し年のとった女の人が箒でせっせっとゴミをはいていた。



お金持ちのボンボンめ。




あたしの前の学校では自分たちで掃除したんだぞ。




なんて心の中で呟くも、誰もツッコんではくれなくて少し寂しい。



早くこの環境にも慣れなくちゃ。



楽しかったあの思い出に少し浸りながらあたしは西野先生の後ろを歩いた。



すると、


西野先生が急に立ち止まった。



あたしはそのまま先生にぶつかりそうになったものの、持ちこたえた。



「…うわ、あぶなー。」


小さく舌打ちもし、前を向けばあたしをじっと見つめる西野先生。


「ぇ、えっと、何ですか…って、キャァ!」




西野先生はいきなりあたしの肩を掴んだ。


指が肩に食い込んで痛い。


「…先生?」





「君には辛いと思うけど…がんばるんだ」






と、目に涙をうかべて意味深な発言。





まぁ、この発言の意味はすぐに分かるのだけど。


このときのあたしは訳も変わらず、ただ唖然としていた。