見上げた山城くんの顔は、いつしか見覚えのある自信に満ち溢れた表情で、それはまあなんとも男らしい。
そうだ思い出した。昨日のお昼の出来事で、全くそっくりな瞳をこちらに向けていた。
それじゃあ、山城くんの言う"いいこと"とは、ヤキモキ大作戦に関わっているのかな。
このまま頭をフル回転させていれば間違いなく知恵熱一直線な状況に、彼はこれまた絶妙なタイミングで姿を現した。
唐突に強い力で腕を引かれ、山城くんの顔が呆気なく離れていく。
「に、西山くん…!」
教室の中がより一層騒めきを増す。
隣のクラスの西山くんの登場に、主に女子生徒から黄色い歓声が上がる。
改めて私の彼氏は絶大の人気を誇っているのだと実感させられる。
が。
今はそれどころではないことくらい、私でも分かる。
目線の先、西山くんはポーカーフェイスを崩してこそはいないものの、その熱を帯びた瞳は明らかに彼の機嫌を曲げていることを告げている。
「…………なに、してたの」
こんなときに聞く西山くんの声に、場違いながらも愛おしさを感じずにはいられない。
質問をしている筈なのに、語尾に疑問符の付いていない口調に見えない迫力がある。
「や、あのね西山くん!これはヤキモキだいさ、」
「今朝ぶりだね、呉羽ちゃんの彼氏さん」
「…………」
「西山くん、で合ってるかな?」
西山くんから醸し出されるかつてないない迫力に気圧され、思わずぽろり、言葉を零す。
それを阻むように山城くんが横から言葉を挟む。
私の腕を掴んでいた西山くんの手を離させ、一歩前に歩み出て私の前に立った。