草についている露の玉が、まるで宝石のように朝日に輝いている。それが歩いている草地一面に広がっていて、まるで宝石箱の中にいるみたいだとラファルは思った。

銀の霧に輝く蜘蛛の巣。
鳥たちが高らかに鳴きかわす声。
さらりと頬をすべっていく、冷たい風。
空が闇色から、朝日が昇るにつれ、朱色に染まる。これ以上ない程美しい光景。

どれも、初めて見る物で、ラファルは心が温まるのを感じた。

けれど…

「何か…寂しいな」

小屋が見えなくなった背後を振り向いて、ラファルが呟いた。隣を歩くタリアが、ラファルを向いて歩くよう促した。

「前を向きなさい。転んじまうよ」

「ねぇ、またあの家に帰れるかな」

「無事に今回のことを終わらせればね」

ほら、お行き、とラファルの背を押して、ラファルも歩みを進める。並んで歩くタリアとラファルの少し前をイチが歩き、そのずっと前をローダが歩いていた。

ローダは、決して三人に合わせて歩こうとはしなかったものの、彼らが自分を見失わない程の速さで歩いた。姿が見えなくなっても、まっすぐ進んでいれば、またひょっこりと帰って来る。

「この調子なら、夕刻にはヨルサにつくかな」

「そうだね」

イチの言葉に、聞き覚えのある単語が混じっているのにラファルは気付いた。