ぽんぽん、とラファルの頭を優しくたたいて、タリアは立ち上がる。その時に、林に仕掛けてある罠を見に行っていたイチが、右手によく肥えた兎をぶらさげて帰って来た。

「お帰り。こりゃまた、上手そうな兎がかかってたね」

「あぁ。今夜は久しぶりに肉が食えるな」

「その兎…食べるの?」

ラファルがもらした言葉に、タリアとイチが振り向いた。ラファルは、食べなきゃ生きていけないと分かっていても、やはり辛かった。同じ、生き物なのだ。

「そうだよ。私らは命を食べないと生きていけないからね。だから、食べる時は感謝して、食べるんだよ」

タリアの言葉に、ラファルはわずかに首をすくめるようにして頷いた。タリアの言う通りだ。食べるしかないのなら、せめて、感謝しながら食べよう。

イチと顔を見合せ、タリアは小屋に向かって歩き出したが、ラファルの気配がついて来ないのに気付いて振り向いた。

見れば、一歩も動いていない位置で、ラファルが胸を押さえて佇んでいた。まだ納得しきれていないだけだと思い、先に行っていようと背を向けかけた時、イチに呼び止められた。

「待て…様子がおかしい」

いつになく真剣なその声に、タリアもその気配に気付いた。まるで、ラファルの周りに円を描くように、姿の見えぬ気配が動いていた。

ラファルもそれが分かるのか、青ざめて、吐きそうな顔をしている。その異常さに気付き、タリアが駆け出したのと気配がラファルに襲いかかろうとしたのと、声が割って入ったのは、ほとんど同時だった。