「随分上達したねぇ」

目の前で、見事に一連の動きを終わらせたラファルに、感心したようにタリアが言った。

「正直、ここまで上達するなんて思わなかったよ。あんた、学者だけでなく武人にも向いてるかもね」

ラファルは嬉しそうに笑って、大きく息をついた。呼吸を落ち着かせる方法も、タリアは教えてくれた。心臓の音を聞きながら、ゆっくり、大きく息を吸うこと。その通りにすると、ぴたりと呼吸が静かになるから不思議だった。

「この調子なら、剣を使った練習に入るのはもう少し早いかもね」

「タリアは何年剣を持ってるの?」

「二十五年くらいかな」

こともなげに発されたタリアの言葉に、ラファルの翡翠色の瞳が大きく見開かれた。

「二十五年!そんなに?」

「あぁ。五歳の時には、もう剣を握りしめていたからね」

「俺もそれくらい練習すれば、タリアみたいに強くなれる?」

「実戦に出ないとダメかな。練習には限度があるからね」

ちょっと残念そうにしたラファルを脇に呼んで、タリアはラファルに言った。

「強くなりたいのは構わないけど、何も強さっていうのは剣を握っていることだけを指すんじゃないからね。無闇やたらに人の命を奪っていたら、それは"弱さ"だ」

ラファルはよく分からずに首を傾げる。

「正しい剣術の教わり方をしていれば、自然に意味が分かるようになるよ」