「…無理、だろうな」

ユゼルが言うと、タガヤは苦笑を浮かべた。

「私はそんなに頼りないか?許可は、大賢者様がとって下さった。…あの方も、できることなら皇子をお助けしたいと思っておられる」

「ほう…あの人もまだ、帝の言いなりにならないだけの頭があったか」

「そういうことを声に出して言うものじゃない。それに、帝だって、皇子を助けたいと思っておられるよ」

ん?とユゼルが首を傾げると、タガヤは知らなかったのか、というような顔をした。

「皇子を確実に殺そうとしていたならば、何故、たった三人の兵士で宮を襲撃させた?あのお妃様は、なかなかに賢い。襲撃を察知したら、皇子を逃がすことくらい目に見えていたはずだ」

「…あぁ」

そう言えば、そうだな。
…あの方も、一応は父親、というわけなのだろう。

「私もできるだけ早く、あれを祓う方法を探してみる。あなたも大変なのは分かるが、皇子を連れ戻してほしい」

「あぁ。俺と頭の傷が治り次第、再び偵察にうつる予定だ」

右手を、ゆっくり握ったり開いたりしながら、ユゼルは答えた。