聖魔の想い人

「しかしなぁ、俺には怪我をして家に帰ってくるお前しか記憶にないぞ」

「失礼だね。数え切れないほどこの家の敷居はまたいだけど、怪我してない時の方が多いよ」

二人のやり取りに、ラファルが小首を傾げた。

「二人は何処で出会ったの?」

その言葉に、タリアとイチははっ、と顔を見合わせた。いや、正確にはイチがタリアの顔を伺ったのだ。話していいものかどうか。

答えればラファルは必ず、もうひとつ質問をかけてくる。そしてそれは、タリアが一番訊かれたくないであろうことだった。

「…いずれ、教えてやるよ」

やがて、まるで自分に言い聞かせるように呟いて、タリアは顔を背けた。ラファルは、ちょっと困ってイチを見上げたが、イチも、苦笑しだけだった。

今は聞けなくても、いつかちゃんと聞ける時が来るような気がしたので、ラファルはそれ以上、訊くのをやめた。その後は、タリアとイチが昔のことを話してくれた。

軽口を叩きあいつつも、二人の本当に仲が良いということが伝わってきて、ラファルはほっこりと心が温まるのを感じた。