聖魔の想い人

タリアが言った時、それまで相木の隅々まで見回っていたラファルが振り向いた。

「イチ、緑の箱なんてないよ」

「あれ、そこじゃなかったかな?」

イチは言って、立ち上がると、ラファルと一緒に相木を探し始めた。その姿が、なんだか父子か兄弟みたいで、笑えてしまった。

「あぁ、あった、ごめん。相木から移したみたいだ」

探し出した、随分と古い塗装がはげかけた、緑色の木箱を持ってイチが再びタリアの隣に座った。ラファルが木箱を興味津々に見つめる。

それに気付いたイチが笑って、

「ただの治療道具だよ」

と言うと、ラファルはつまらなさそうに小さくため息をついた。

「お前の場合、治療よりまず飯だろうからな。けど、布は一応取り替えないと」

「あぁ。……ラファルは、見ない方がいいかな」

ラファルは、仲間外れにされた子供のような顔をしたが、すぐにタリアの意思を察し、囲炉裏のせばに腰かけた。タリアの体には、今回負った傷以外にも無数の傷がある。それを、見せたくなかったのだ。

イチは、まずタリアの右腕に巻かれた布をとり、傷の具合を確かめた。