次にタリアが目を覚ましたのは、空腹のせいだった。目を開けるより先に鼻が動いてしまい、漂ういい臭いをかぎとっていた。

イチにはよく、食い意地が張っている、と呆れられるが、食べる時に食べておかないと食べられない生活だ。体がそう言う風になってしまっている。

目を開けると、夕暮れの心地よい薄暗い中、囲炉裏の赤い火がとても明るく見えた。鍋がかけられた囲炉裏の周りに座っているイチとラファルが見えた。

「それは何て言うの?」

ラファルが、薬草の仕分けをしているイチの手元を、身を乗り出して覗き込んだ。

「これはカルって薬草だよ。腹を下した時に、煎じて飲んでもそのまま食っても効くんだが、毒草の一種によく似ていてね。見分けは…分かるかな。葉の裏が白っぽいだろう」

「本当だ。白っぽいね」

どうやらラファルは、薬草師であるイチから薬草の見分け方を教わっているらしい。

「お、タリア、起きたか」

イチがふとこちらに気付いて、つられてラファルも振り向き、心底ほっ、としたような表情を見せた。四つん這いでタリアの隣にやって来て、嬉しさ半分、心配半分の顔で覗き込んでくる。

「タリア大丈夫?傷は痛くない?」

「そりゃ痛いよ。でも大丈夫。治るから」

「年のわりに、傷の治りは早いからな」

イチが笑って、ほかほかと湯気が立つ鍋の中身をたまじゃくし椀によそい立ち上がると、持ってきてくれた。