聖魔の想い人

「俺にとっちゃ命の恩人だぜ。坊主、この人はな、この辺じゃ有名な剣士なんだ」

「よしとくれ」

タリアは言って、トサカが招き入れる家の中にラファルを入れ、周囲を見回してから自分も家に入った。


小屋の中は、すっ、と埃の臭いが充満していて少し息苦しい所だった。人が三人程ようやく座れる程度の広さで、隅には布団がたたまれている。

本当に、寝れればいいというだけの、物が何もない家だった。ラファルが、あまりにも殺風景なその家に、戸口でぽかんとしていると、それに気付いたトサカが苦笑した。

「こういう家は始めてかい」

「あぁ…はい」

「ここいらの連中は、みんな貧しいからな。飯は近くの家五軒と一緒に、外で集まって食うんだ」

「…寒くは、ないのか」

「南部はまだマシさぁ。北部では、こんな生活は無理だろうがな」

トサカは言って、手際よく布団を埃がつもった床に敷いた。

「こういう所の奴らは、バカな衛兵どもに狙われやすいんだ。俺も友達と二人で、ためた金で酒場で酒を飲んでたらな、そういう奴らに絡まれちまってな。むこうは剣、こっちは素手。勝てるわけがないだろ?そこを助けてくれたのが、我らが英雄・女剣士タリアさんだ!!」